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相続というのは亡くなった方の財産や想いを引き継ぐことです。
しかし、実際には被相続人の方の想いとは裏腹に、複数人の相続人の間で財産の分配方法を巡って争いが起きてしまうなんてことがよくあるのも事実です。
相続財産の中に土地などの不動産があるならなおさら、相続人間での話し合いで決着をつけるのがむずかしそうですよね。
このような遺族間での争いを「相続」とかけて俗に「争族」といいますが、
「争族」を避ける手段の一つとして、別の記事でもお話ししました「遺言書」があります。
今回はそんな遺言書について、さらに詳しいことをお話ししたいと思います。
それでは一緒に勉強していきましょう!
遺言書はどんな方にとっても理想の相続を実現する上で有効なものですが、そんな中でも特に遺言書を作成することが推奨される事例をご紹介します。
【遺言書はどんな方におすすめか】
法定相続人が一人もいない場合 | 法律上の相続人がいない場合、遺産は宙に浮いてしまいます。お世話になった方などに財産を渡したいという希望がある場合には、遺言で意思表示をしておく必要があります。 |
相続人以外に財産を渡したい場合 | 法律上の相続人がいるけど、別の人に財産を相続させたいという場合もあるでしょう。そういった時に、特に遺言での意思表示がなければ法定相続人が相続することになります。 |
夫婦間に子どもがいない場合 | このような場合には配偶者にできるだけ多くの財産を相続させたいと望む方が多いです。その時には遺言による意思表示が必要です。 |
後継者に事業を継がせたい場合 | このような場合で遺言がない時には、事業用の資金や株式なども分配されて事業が成り立たなくなってしまう可能性もあります。 |
相続人の中に行方不明者がいる場合 | 相続人の中に行方不明者がいると、遺産分割協議のために代理人をたてたりと時間や手間がかかってしまいます。遺言で遺産分割を指定しておくことで手間を省くことができます。 |
元配偶者と現在の配偶者がいる・婚外子がいる場合 | 元配偶者と現在の配偶者や婚外子を含んでの相続はデリケートな問題になりやすく、裁判まで決着がつかない場合も往々にしてあります。遺言を残しておくことでトラブルを防ぐことにつながるかもしれません。 |
内縁の配偶者に遺産を相続させたい場合 | 内縁の配偶者は法律上では相続人になる資格を持っていません。内縁の配偶者に財産を相続させたいと希望する場合は、その旨の遺言を残しておく必要があります。 |
以上の例に当てはまる場合は、遺言書の作成を特におすすめします。
このように様々なケースで理想の相続の実現に必要な遺言書ですが、実はその形式は1つでなく、3つの種類があります
まず1つ目は「自筆証書遺言」です。
こちらは名前からも想像しやすいですが、自分で手書きで作成した遺言のことです。
「自筆証書遺言」の【メリット・デメリット】や【要件】を見ていきましょう。
【メリット】 | 【デメリット】 |
「誰でも」「どこでも」比較的簡単に作成することができる | 自作なので内容が不明確になってしまう場合がある。 |
費用がかからない | 自筆・署名ができない状態では作成できない。 |
遺言の内容や保管場所を秘密にしておける | 紛失や盗難・改竄のリスクがある。 |
【自筆証書遺言の要件】
①自筆で作成する(代筆不可) | |
②遺言を作成した年月日を記す | |
③自身の署名・押印をする | |
④不動産がある場合は地番なども記す | |
⑤遺言書が2枚に及ぶ場合は割印をする |
以上の要件を満たしていなければ、「自筆証書遺言」は遺言書としての認定を受けることができずに無効となってしまう可能性があるので、慎重に作成する必要があります。
では以上を踏まえたうえで実際の「自筆証書遺言」の例を見てみましょう。
続いて2つ目は「公正証書遺言」です。
こちらは「自筆証書遺言」と違い、法律のプロである公証人が公証人法や民法に従って作成する公的文書になります。
先ほどと同様に【メリット・デメリット】、そして【手続きの流れ】を見ていきましょう。
【メリット・デメリット】
【メリット】 | 【デメリット】 |
内容が明確な遺言書を作成することができる | 費用がかかる |
裁判所による遺言書の検認がいらない | 遺言書の作成の手続きが複雑で難しい |
紛失や盗難・改竄のリスクがない | 遺言があることを秘密にできない |
【公正証書遺言の作成手続きの流れ】
①遺言書の内容について考えを整理する |
②必要書類の準備(不動産登記謄本・戸籍謄本・通帳の写しなど) |
③公証人との事前打ち合わせ |
④証人2人以上の立ち合いのもと、公証役場で公正証書遺言の作成および原本の保管。正本とコピーを依頼者本人に手渡し。 |
以上が「公正証書遺言」の作成手続きです。時間や費用・手間はかかるものの、正確な遺言を作成したい方や安全に保管しておきたい方にとっては有効な手段といえます。
最後になる3つ目は「秘密証書遺言」です。
こちらは簡単に言うと、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の特徴が合わさったものだと思っていただければと思います。
まずは今まで通り【メリット・デメリット】、【手続きの流れ】を見ていきましょう。
【秘密証書遺言のメリット・デメリット】
【メリット】 | 【デメリット】 |
遺言書の内容を秘密にできる | 費用がかかる |
パソコンや代筆でも遺言を作成できる | 紛失や盗難・改竄のリスクがある |
署名・押印だけできれば作成可能 | 内容に不備がある場合は無効になる可能性あり |
【秘密証書遺言の手続きの流れ】
①自筆もしくは代筆、パソコンで本文を作成し自分で署名・押印 | |
②作成した遺書を封筒に入れて閉じる | |
③公証人と証人2人以上の前で封筒を提出 | |
④公証人と証人、遺言作成者本人がそれぞれ封筒に署名・押印 |
以上が「秘密証書遺言」の作成手続きの流れになります。
どうしても内容を秘密にしたいという方にとっては有効な方法ではありますが、一方で内容に不備があった場合は無効になってしまう可能性があることや、手続き完了後は自身で保管しなければならず紛失などのリスクがある点には十分な注意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
遺言が相続の円滑化や理想の相続実現に有効であること、そして遺言書には3つの種類があり、それぞれにメリット・デメリットが存在することがわかりましたね。
遺言を作成することは財産を遺す方にとっても、遺族の方にとっても様々なメリットがあります。ぜひあなたに合った遺言作成方法を選んで活用してください。
最後に、
下にそれぞれの遺言書の特徴をまとめた表をご用意しましたので確認用にお使いください!
項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
書く人 | 本人の自筆 | 公証人 | 自筆、もしくは代筆。パソコン可 |
署名押印 | 本人のみ | 本人・証人 公証人 | 本人・証人 公証人(封筒) |
証人 | 必要ない | 2人以上 | 2人以上 |
封入・封印 | 望ましい | 必要ない | 必要 |
費用 | かからない | ~10万円程度 (財産額による) | 1万1000円 |
内容 | 本人のみ | 本人・証人 公証人 | 本人のみ(代筆者がいれば別) |
遺言の存在 | 本人のみ | 本人・証人 公証人 | 本人・証人 公証人 |
保管 | 本人 | 原本は公証役場 正本・謄本は本人 | 本人 |
家裁の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
紛失の可能性 | あり | なし | あり |
盗難等の可能性 | あり | なし | あり |
無効の可能性 | あり | なし | あり |
もめない相続実現のためにとても有効な遺言ですが、作成する際には気を付けなければならないこともあります!そちらは別の記事で紹介していますのでぜひ併せてご覧ください。
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